2023年05月19日

『読谷山焼 北窯』が発行された

 正確には『読谷山焼 北窯 四人の親方とやちむんづくり一年の記録』というのだが、これは当協会の会員で、『民藝』誌のレイアウトを担当しておられる高橋克治さんが企画をした本である。これも正確には、四釜尚人さんという方との共同企画で、川瀬美香さんという方が撮影者である。四釜という珍しい苗字のひとは京都でギャラリーをしておられ、『民藝』にも何回か執筆していると記憶する。川瀬さんは「あめつちの日々」という映画の監督をした人だそうだ、----見てないのだが。
 B5版で200ページある。定価が2500円、高いと言えば高いが安いと言えば安い、というか安い。最初見たとき、どうやって作ったのかと思った。取材費がかかりすぎて採算が取れないのではと思ったのだ。高橋さんに聞いたら、取材のため1年間、高橋さん、四釜さん、川瀬さんの3人、時には撮影助手をくわえて4人が、3、4日づつ7回くらい沖縄に行ったそうだ。土づくりから窯出しまでの全作業を取材しているので日程の調整にも苦労したことだろう。これらの費用は出版元、グラフィック社が負担したという。かくて、一つの窯の仕事と人の全てを記録した希な本ができあがった。

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 さて北窯は1992年に初窯、以来30年がたった。いまや、いやずっと以前から沖縄を代表する窯元の一つである。東京でも、他の沖縄の焼物に比べて目にする機会が多いような気がする。人気があるだろうし、生産量も多いのではないか。それに4人の親方が共同で窯を運営するという組織のありかたも特徴的である。この本では、土づくりに始まる全作業、4人の親方のすがた、作品が多くの写真で紹介されている。履歴や運営のは四釜さんが、材料のことや作業工程は高橋さんが書いていて、さらに卒業した弟子や関係者の思い出等の文章が載っている。一読すると、北窯の全体がわかってくる。一覧すると、4人の親方のひととなり、作品のすばらしさを知ることができる。沖縄の青い空の下で行われる楽し気な集団の仕事の様子が感じられる。
 窯をやっていくうえで松田米司親方は「沖縄で産出する材料を使うこと」「可能な限り自分たちで材料の調達も行うこと」「釉薬は工房で作ること」という方針をあげておられるという。これが北窯の焼き物の魅力の源と思えるが、これを持続させることはなかなか難しいのではないか。北窯は、安きに流れず高い志を掲げて、作品の質と量そして経済とを両立させているのではないかとわたしには思われれう。
何年か前、沖縄で全国大会があって、この北窯も見学先のひとつであった。工場の大屋根が琉球赤瓦で葺かれていて、立派で美しかった。米司親方が、古瓦の調達のため沖縄中を駆け回ったと言っておられた。   
発行:潟Oラフィック社 2022年12月25日発行 定価:2500円(税別) 
(藤田)

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2023年04月13日

次回のオンライン例会

東京民藝協会4月オンライン例会(会員限定)
「豊永盛人さんに聞く」
日時 2023年4月28日(金)19:30~
講師 豊永盛人さん(琉球張子制作)

先月につづいて昨年の日本民藝館展の受賞者のインタビュー映像を見ます。今月は、奨励賞を受賞なさった琉球張子の豊永さんの映像です。とっくに受賞していると思えるくらいの方ですが、今回 が初の受賞だそうです。作品を何かで目にした方 も多いのではないでしょうか。なにしろ、かの尾久彰三氏が「天才」というくらいな方です。 映像をみたあとでご本人のお話も伺えます。どう ぞご参加下さい。
posted by 東京民藝協会 at 18:53| Comment(0) | 例会

2023年03月26日

高等学校における「民芸」の学習

 高校の授業で「民芸」に関して学習する機会は限られています。柳宗悦の思想を学習する時間は「公民科」の「倫理」と「公共」の授業だけです。高校の「倫理」で標準的に使用されている第一学習社の教科書では、日本の近代思想で柳の思想を取り扱います。
 しかし、教科書の記述は「柳宗悦は、日常的に庶民が用いる実用品の中に日本文化の個性としての美を発見し、民芸という言葉で表現した。」というものだけであり、この2行がすべてです。同社の資料集では多少詳しく紹介されており、日本民藝館が提供した写真(木喰仏、染付秋草文面取壺)が掲載され、「下手物」や「日本民藝館」という言葉もあり、原典資料として『雑器の美』が掲載されていますが、それでも半ページにもすぎません。
 「倫理」の教科書は全7社から出版されていますが、7社すべての教科書に柳の思想が掲載されているのは幸いといえます。生徒は基本的に試験のために学習をしますので、柳の思想が試験に出題されることもあると思います。しかし、試験対策としての柳の思想の重要性は、1つ星(最重要は5つ星)です。教員の教え方にもよりますが、「柳宗悦」と「民芸」の用語を記憶するだけで、生徒が民芸の美について理解することは不可能です。
 同社の「公共」の教科書でも「柳宗悦は、私たちが何気なく使う器や道具に、日本の伝統文化をみることができました。」が記載のすべてです。資料集は4分の1頁のトピックだけであり、実にさみしいものです。
 そのようななかで「民芸」について高校生が学ぶ機会として希望が持てるのは、2022年からの新カリキュラムで新設された「総合的な探究の時間」です。この授業は、生徒が自らの興味・関心に基づいて課題を設定し、探究していくというものです。学校によって異なると思いますが、2年間〜3年間をかけて学習を深めていきます。そして文部科学省がふさわしい探究課題としてあげていることの一つとして、「伝統文化」があります。これは地域の伝統や文化とその継承に取り組む人々や組織を探究課題として設定することを想定しているものです。これに関して「民芸」は、うってつけの課題設定であると考えます。柳の著作を読み、日本民藝館に足を運び、気に入った民芸品を使用する機会があれば立派な探究になるはずです。
 また小・中学校にも「総合学習の時間」があり、探究的な学習が重視されていますので、小学校から高校までそれぞれの年代に応じて、「民芸」に関して学ぶ機会ができると考えます。少なくとも「日本民藝館」が現在まで存続していることを伝えることはできます。
 今後の「民芸」の在り方を考えると子供たちに知ってもらうことが第一です。私は折に触れて「民芸」について生徒に話をしていますが、意外に興味をもってもらえるものだということを感じています。日本全国の学校で「探究の時間」がありますので、「民芸」を探究課題としてもらえるように各学校に働きかけるということができればよいのでは、と考えています。
以上
東京民芸協会 竹村知洋
posted by 東京民藝協会 at 19:02| Comment(0) | 日記

2023年03月05日

2023年3月のオンライン例会のお知らせ

東京民藝協会 3月オンライン例会(会員限定)
「佐々木かおりさんに聞く」
日時 2023年3月17日(金)19:30〜
講師 佐々木かおりさん(陶工 焼き物工房 野はら屋) 

『民藝』誌の2月号は日本民藝館展の特集号でした。なかで受賞者のインタビュー記事が載っています。そのもとになったインタビューをオンラインで紹介します。
今回は奨励賞を受賞なさった陶器の佐々木かおりさんのインタビューです。佐々木さんは沖縄の北窯で10年修業なさって、故郷鹿児島に築窯、地元の土をつかった「黒もん」を主に焼いておられます。映像をみたあとでご本人のお話も伺えます。どうぞご参加下さい。
参加ご希望でメールの通知を受け取ってない方は 090-6531-5205(藤田)まで連絡下さい
posted by 東京民藝協会 at 15:04| Comment(0) | 例会