2018年09月28日

8月例会 民藝館特別展見学

 8月25日に民藝館特別展「書物工芸---柳宗悦の蒐集と創造」」の見学会をやった。参加者は10人であった。館の学芸員白土さんがご案内下さった。
 「書物工芸」とは聞きなれない言葉で、この文を書くときに白土さんに改めてお聞きしたら、以下のように説明して下さった。
《雑誌『工藝』44号が書物の特集号で、『工藝』の総目次に特集名が「書物工芸」とあるので、展覧会名はここから取りました。ただし厳密に言うと、44号には「書物工芸」の語は見えず、同じ意味で「書物の工芸」の語が使われています。
 ちなみに柳は同号で下記のように記しています。
「何しろ書物も一つの重要な工芸品である。是非工芸品として格を高める必要がある。だが此ことは今のような時代では周密な心の準備が要る。今のところ私版本として少数の部数から始めるより仕方ないであろう。私も此の道に対し何か貢献したいと常に願う」》

 さて、案内パンフレットの解説がある。《日本民藝館の古典籍コレクションは、創設者柳宗悦蒐集による、柳文庫の蔵書が中心となっています。その特色を二つ挙げるとすれば、第一には民画としての魅力にあふれた挿絵本が挙げられます。そして第二には、仏教関係の書物、とりわけ庶民仏教といえる浄土門の経典類が充実していることが挙げられます。本展は柳文庫の古典籍から、挿絵本と浄土教の聖教を軸に、海外の貴重本を交えてご覧いただく展覧会です。併せて、自著をはじめ柳が装幀に関わった多くの書物を展示いたします。これらの書物は文献としての価値を備えていることはもちろん、工芸品と呼ぶに相応しい体裁の造本が目指されています。》

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 展示はこの説明にそって蒐集部門と創造部門の2本立て、あるいは創造部門を2つに分けると3本立てで、一つは柳が蒐集所蔵していた古典籍等、一つが柳の装幀による私家版等々、あと一つが雑誌『工藝』120冊全部の展示(大広間)であった。柳が上記引用文中の「私も此の道に対し何か貢献したい」という願いをどう実現したか、それを明らかにした展示であった。
 柳の蔵書の整理はまだ終わっていないそうだ。それほど膨大でかつ質が高いらしい。画家書家であったらよだれを垂らすだろう、信徒門徒であったら拝みたくなるだろう、それぞれの道の専門家から見れば相当ありがたい品々が並んでいるのである。
 柳の時代、洋書を入手することは容易でなかった。多分丸善などに注文するか、現地在任の知人なんかに頼む、それも手紙を書いて。それから手元に届くまでにさらに数か月、忘れたころ届くのであろう。そうやって稀覯本とされるようなものを収集した。今では考えられないほどの金と時間が、そしてもちろん脳力がかかっている。

 時間と金と脳力と言えば、『工藝』の刊行も大変な力業である。ワープロも編集ソフトも携帯電話も電子メールもファックスも宅配便も、今ある便利なものがまるでない時代であった。そういう時代に手の込んだ月刊誌を10年間出し続けるということは想像を絶する。柳は、またその関係者はとにかく忙しかったにちがいない。しかも柳は、このほかにたくさんの仕事を同時にやっているのだから驚くほかはない。
 この120冊がそろって展示されることはまれであり、民藝館では初めてのことという。加えて、1年分ずつをまとめる帙、表紙の見本刷り、表紙を張り込んだ屏風などが一緒に見られるのは民藝館の展示ならではであろう。民藝館にはこの120冊が3セットあり、うち一揃いには柳の書き込みが入っているそうだ。

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 名品揃いとは言っても、見る人によってはありがたみが薄く地味な展覧会かもしれない。しかし松井健氏が『民藝』8月号に《柳がごく若い時から熱愛した書物の世界に焦点を当てて、その蒐集と創造を明らかにしようとする、重要な展覧会である》とご紹介なさっている(P62〜63「書物工芸展簡介」)。

 白土さんと民藝館の皆様、ありがとうございました。
(藤田)

posted by 東京民藝協会 at 17:53| Comment(0) | 例会

2018年09月16日

10月の例会

○東京民藝協会2018年10月例会
澁川祐子「民藝と食」

日 時 2018年10月5日(金) 19時15分〜21時ころ
場 所 べにや民芸店 目黒区駒場1-33-8 コードンブリューII 2階
講 師 澁川祐子(ライター、東京民藝協会会員)
参加費 500円 (会員以外は1000円)
定 員 25人位(会員優先/先着順)
参加申込 下記のメールに10月4日(木)まで
tokyomingeikyokai@gmail.com
または電話03-5875-3261(べにや民芸店)

柳兼子のカレーや濱田家のパースティ、吉田璋也のしゃぶしゃぶ。民藝運動のまわりにはおいしいエピソードがたくさんあります。蒐集の旅などで出会った食を通じ、彼らがどのように異文化を受けとめていたかを探ります。(澁川)

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2018年09月01日

次回の例会

○東京民藝協会2018年9月例会
柚木沙弥郎氏講演「自作と日本民藝館」の上映会

日 時 2018年9月21日(金) 19時15分〜21時ころ
場 所 べにや民芸店 目黒区駒場1-33-8 コードンブリューII 2階
参加費 500円 (会員以外は1000円)
定 員 25人位(会員優先/先着順)
参加申込 下記のメールに9月20日(木)まで
tokyomingeikyokai@gmail.com

今春に日本民藝館で開催された「柚木沙弥郎の染色展」の記念講演として、5月19日に行われた柚木さんの貴重な講演会の映像を日本民藝館からお借りして上映いたします。タイトルは「自作と日本民藝館」。
posted by 東京民藝協会 at 16:12| Comment(0) | 例会

2018年08月18日

7月6日 東京民藝協会例会 村上豊隆「民藝入門」

7月の例会は、日本民藝協会の村上豊隆さんを講師に迎え、講座「民藝入門」を行いました。
会場はいつものておりやではなく、駒場のべにや民芸店。参加者は15人ほどでした。
個人的には、村上さんの「民藝入門」を聞かせてもらうのは2回目となります。数年前の松本民芸館主催の講演に参加したときは、松本民芸館の所蔵品や地元の工芸品を例に、地域性などについてわかりやすく話されていたのが印象的でした。

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このほど村上さんが編集している雑誌『民藝』にて「小絵馬」を特集(2018年5月号)したこともあり、今回は絵馬から民藝の美しさの基本的な性質を検討していきたいとのこと。小絵馬から読み解く「民藝」。期待が高まります。

無病息災などの願いが込められた絵馬には、絵師により描かれた「大絵馬」と、庶民によって描かれた「小絵馬」に分類されます。
柳宗悦は、東北地方でみられる南部小絵馬を「名も無い職人画工の筆から生まれ」「全く工芸的な性格をもつ民画であった」と高く評価し、数多くの絵馬を蒐集し、日本民藝館に所蔵されています。また、小絵馬の蒐集家だった芹沢_介の自宅を柳が訪問したことで両者の交流が始まったことは良く知られています。
このような基本情報のほか、日本民藝館所蔵の南部小絵馬の分布、特徴などが解説され、村上さんが『民藝』の取材で訪れた、練馬の縁切神社でのエピソード等をお話いただきました。

興味深かったのは、『民藝』5月号のスペースの都合上掲載できなかったという、東北の「失せ物絵馬」というもの。
この絵馬には、なぜか金槌や包丁といった金物の絵が描かれているのだそうです。
漁師にとって、金物を海に落とすのは縁起が悪く、不漁になるとの言い伝えがあるため、それぞれ落とした金物の絵を描き、神社に奉納するのだとか。
そこに描かれている絵は奇妙でコミカルなのですが、思いと願いが強く感じられました。
私たちにとって、身近で馴染みのある絵馬の話はわかりやすく、「民藝入門」には格好の題材だったといえます。

ところで、日本民藝館には小絵馬だけではなく、大絵馬も所蔵されているそうです。村上さんは、柳は決して民間宗教の象徴である「小絵馬」のみを賞賛したわけではなく、「大絵馬」も同じように美しいものとして評価していると語り、最後に、5月に日本民藝館でおこなわれた柚木沙弥郎さんの講演で発せられた言葉(『民藝』7月号に掲載)を朗読し、お話を締めくくられました。

村上さんによる「民藝入門」は、今後も恒例例会として、いろいろな切り口でお話していただきたいと思いました。どうもありがとうございました。
(奥村)
posted by 東京民藝協会 at 18:27| Comment(0) | 例会