2021年09月21日

映画『食の安全を守る人々』と本『売り渡される食の安全』

 標記の映画は今年の夏に封切り、本は2019年夏に発行された。ともに元農水大臣の山田正彦氏が制作し書いた映画と本である。豊かそうに見える日本の食料や農業が大変なことになっているらしい。
 映画の宣伝文はこうである。

 〈種子法廃止、種苗法の改定、ラウンドアップ規制緩和、そして表記無しのゲノム編集食品流通への動きと、TPPに端を発する急速なグローバル化 により日本の農と食にこれまで以上の危機が押し寄せている。しかし、マスコミはこの現状を正面から報道することはほとんどなく、日本に暮らすわたしたちの危機感は薄いのが現状である。/この趨勢が続けば多国籍アグリビジネスによる支配の強まり、食料自給率の低下や命・健康に影響を与えることが懸念される〉

 ここで、多国籍アグリビジネスとある代表的存在がモンサント社(旧社名、現在はバイエル社の一部)であり、そのビジネスの実態が「モンサントの不自然な食べ物」という映画で明かされた。こちらは2008年に公開されており、有名な映画なのでご存知の方もいるだろう。ついでにその映画の宣伝文の一部を引用しよう。
〈自然界の遺伝的多様性や食の安全、環境への影響、農業に携わる人々の暮らしを意に介さないモンサント社のビジネス。本作は、生物の根幹である「タネ」を支配し利益ばかりを追求する現在の「食」の経済構造に強い疑問を投げかける。「世界の食料支配、それはどんな爆弾より脅威である・・・」と作中で語られる、世界の食物市場を独占しようとするモンサントの本当の狙いとは?〉


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 旧モンサント社(バイエル社)が販売してきた除草剤「ラウンドアップ」(商品名)と遺伝子組み換え作物の関係を簡単に説明すると、ラウンドアップに耐性のある作物を遺伝子組み換え操作で作る。農家はその種を蒔き、ラウンドアップを散布する、当然他の植物は枯れてしまう。ラウンドアップが散布された土地には遺伝子組み換え作物以外は育たない。また組み換えの種は勝手に飛んで行って周辺の作物と交雑を繰り返し、いつしか原種を駆逐してしまう。この最高の組み合わせによって農家は永遠にその種と除草剤を買わなくてはならなくなる。自家採種は不可能となる。うまいことを考えたものだ。しかも、ラウンドアップには発がん性の疑いがあるというし、さらに遺伝子組み換え食品を摂取することによる後の世代への影響も心配されている。

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 ということで、この本によれば欧米ではラウンドアップに対して被害者から1万3000件の訴訟が起こされ、損害賠償額が日本円で1兆円を超えるのでは、といわれているそうだ。その訴訟が表すように、欧米では使用禁止が定着しつつあるという。ところが、日本政府は問題ないから使用を許可するという立場で、農地にも森林、公園や家庭の庭にも遠慮なく使われる、という恐怖の事態が進行中。さらに近い将来、「遺伝子組み換えでない」という表示(豆腐なんかによく書かれている)が事実上できなくなるような制度も発効するらしい。著者山田は、アメリカの全米小麦連合会会長に「アメリカでは遺伝子組み換え小麦を作っているが(ラウンドアップや類似の除草剤とのセットで)、国内では抵抗が強くて売れない、まず日本で食べてくれ」と言われた、と書いている。
 日本政府は多分農業市場をアメリカに全面的に開放していこうという方針であり、上記の諸政策はそのための布石なのだろう。10年後我々は何を食べさせられているだろう。民藝の結構な器に農薬の残留した遺伝子組み換え食品ということではありがたくないはなしである。
(藤田)

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2021年09月09日

9月のオンライン例会のお知らせ

9月オンライン例会「大阪日本民芸館と作家の仕事−三代澤本寿展を参考に―」
日時 2021年9月17日(金)19時から
講師 小野絢子氏(大阪日本民芸館学芸員)

大阪日本民芸館の設立の経緯や活動をご紹介すると共に、その特色を現在開催中の「型絵染 三代澤本寿」展を参考に考えてみたいと思います。(参考資料・『民藝』2020年4月号・808号「EXPO’70と大阪日本民芸館」特集)
*会員限定になります


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