2022年10月16日

インド映画「響け 情熱のムリダンガム」……音楽とカースト制

 ムリダンガムは南インド地方で行われている民族音楽、カルナータカ音楽で使われる太鼓である。日本では、多分欧米でも北インド地方のヒンドゥスターニー音楽の方が馴染みがあり、太鼓もタブラの方が知られているだろう。タブラは片面の太鼓であるが、ムリダンガムは両面太鼓で、木を刳り貫いた胴に牛の皮が張ってある。演奏者はこれを前に横たえ、片方を膝にのせて両手で叩いて超複雑な、到底ついていけないようなリズムを刻んでいく。たまには胴をたたくし、なんといったらいいか理解不能なサワリのような微妙な音もだす。
 この映画はこのムリダンガムにとりつかれた青年の物語である。青年はたまたま巨匠の演奏を聞いて感動し、その巨匠に弟子入りを懇願するが取り付く島もない。なぜなら、カルナータカ音楽は神聖な音楽で、演奏者も神聖な階層の人間でなくてはならない、わかりきったことではないかと。実は青年の父親はムリダンガム作りの職人であって、獣の皮を扱うけがれたカーストに属しているのであった。インドのカースト制は複雑で詳細は不明だが、簡単に言うとそういうことらしい。演奏家が尊敬されているのに、その楽器を作る職人が賤視されるというのは解せない話だが。(同じようなことが日本にもあった、いや現にあるかもしれない。)しかし青年はそれを熱意と運で乗り越えて巨匠の弟子となり、さらに才能と努力で一流演奏家になっていった、とまあこんな筋書きである。
 そしていやはやインド音楽はすごい。青年は一時巨匠から破門されるのだが、そのときインド中を旅して、各地の打楽器を見たり習ったりする。その音楽と楽器、踊りなどの豊かさ、多彩さには驚くばかり。青年はそれらの音楽を経験して自分の演奏をより高めていく。超守旧派の師も最後にはそれを認めて「お前こそおれの音楽の継承者だ」と言う。めでたしめでたし。
 歌と踊りのインド映画ではあるが、普遍的に存在する工芸と差別の問題、古典と革新の問題にも斬り込んだ珍しい映画であった。渋谷のイメージフォーラムの単館上映らしい。
(藤田)


tmk221016.jpg
posted by 東京民藝協会 at 20:14| Comment(0) | その他

2022年10月15日

10月のオンライン例会

東京民藝協会 2022年10月オンライン例会
「柚木沙弥郎氏の講演を聞く」
日時 2022年10月21日(金)19:00〜    
  

染色家、柚木沙弥郎氏は1922年の生まれで本年ちょうど100歳を迎えられるそうです。
現在、女子美術大学美術館では「柚木沙弥郎100年の軌跡」展が開かれており(10月17日まで)、また来年1月から日本民藝館でも特別展が予定されています。
2018年5月に民藝館で行われた講演「自作と日本民藝館」の記録動画をお借りして上映しますので、ご参加下さい。

posted by 東京民藝協会 at 21:41| Comment(0) | 例会

2022年10月06日

宮入さんの型染

 言わずと知れた日本のアパレル業界売上・店舗数共にナンバーワンといえばユニクロですが、そのユニクロのマガジン「LifeWear」の表紙に、なんと型染めがっ!

tmk221006_01.jpg

tmk221006_05.jpg

 しかも、なんとその作者が私のお友達で、東京民藝協会の仲間でもある宮入圭太さんなのです。
 6年前にInstagramで圭太さんの作品を発見し、彼の素直な感性にグッと来るものを感じて連絡を取ると、備後屋に良く来ているとのこと。すごく喜んで備後屋に飛んできてくれました。
 私のオンラインショップJAPANCRAFT55のロゴや名刺を型染めで作っていただいたのが始まりで、以来ちょこちょことお願いしたり、民藝のお話しをしたりしています。


tmk221006_04.jpg

tmk221006_02.jpg

tmk221006_03.jpg

 Instagramで作品を初めて見た時は、宝石の原石を発見したような気持ちでした。とても実直で謙虚な人柄が滲み出た素直な作品に、キラリと光る才能を感じました。
 独学で型染めを学び、柚木さんに憧れて、試行錯誤を重ねて、悩んで悩んで。
でもまだ多分発展途中だと思います。これからどんどん解放されて、伸びやかな作品ができるんじゃないかな。ユニクロさんに見つけてもらって良かったね。
 このマガジンは日本だけでなく世界中のユニクロの店舗にも置かれるんですね。世界に羽ばたいて行く日も近い!
 私のオンラインショップJAPANCRAFT55(ジャパンクラフトゴーゴー)も再始動したところです。郷土玩具を中心とした民藝の専門店。
 海外にもお届けできるように只今奮闘中。
 ぜひ訪れてみてください。
https://www.japancraft55.online

備後屋ずぼんぼ
posted by 東京民藝協会 at 14:58| Comment(0) | その他

2022年10月02日

2008年 パリでの柚木沙弥郎展(志賀直邦)

投稿がないので、いくらか古くなるが、前会長 志賀直邦氏がお書きになった標記の文章を紹介する。これは以前の『東京民藝たより』第66号(2009年1月発行)に載ったもので、日仏交流150年記念の行事としてパリで行われた民藝に関する2つの展示を紹介したものであった。掲出するのはその一部、柚木展の報告である。もう一つの展示は、「日本における民藝のエスプリ展」(ケ・ブランリ美術館)であった。(藤田)
          ***

 もうひとつ特筆したい企画展は、ヨーロッパ・ギャラリーで10月3日から開催されている「柚木沙弥郎・浮遊する領土」展である。場所はパリ中心部、サンジェルマン・デプレ教会の近くの画廊の多い地区にある。
 柚木氏は染色工芸家として知られるが、近年自由な境地を得て、型染だけでなく、リトグラフ、モノタイプ、リノ・カット、謄写版、カーボランダムなど多岐にわたる「版による表現」に取り組んできた。益田裕作によれば、これほど多くの版形式を自在につかいこなし、独自の作品を作り出した作家は、日本では柚木以外にはいないという。ただ、これらの多種な表現は、いかに意欲的な作家といえども、孤独なひとりだけの作業で作り出すことは不可能だ。アトリエMMGとの出会いがなければ生まれてこなかった、と益田は言う。
 本展では型による染布が主たる展示であるが、それらをテキスタイル・デザインとしてみるのではなく、コンテンポラリーな造形表現としてみようとする。
 私は柚木氏の原点に、芸術家であった祖父や父から受けた資質の外に、同時代的なもの、とくにエコール・ド・パリやロシア・アバンギャルドを想像するのだが、それはそれまでの様式美に対して、より民衆的で平易な表現を感じさせるからである。
 柳宗悦の「工藝の道」に教えを受け、染色の芹沢_介に師事し、時代の子として明快で自由な表現を旨とした柚木氏の仕事は、これからも私たちを楽しませ、生きることの意味を問いかけ続けることだろう。(後略)

posted by 東京民藝協会 at 19:02| Comment(0) | その他