2020年10月19日

旧友からの一筆

 昭和20年代は後半になってもまだお米は配給、戦後の厳しい暮らしからまだ抜け出せない時代でした。私は、工業の町愛知県刈谷市で小学生でした。小学校の近くにバレエ教室があり、妹や友だちが通っていました。市内の高校の講堂での発表会を見に行ったものです。
 その教室のバレエの先生は、その後国連の医務官と結婚され、ご主人とともに中近東の国々を巡っておられました。その間パキスタン、アフガニスタンを中心にイラン、インドの遊牧民の織物、衣類、敷物、装身具などに関心を寄せて調査、収集をされていたのですが、69歳の時にインドで交通事故にあって亡くなってしまわれました。
 ご逝去後に、資料を預かっていた文化学園服飾博物館が「遊牧の民に魅せられて」という展覧会を開催、私はそれを見に行って、図録を買っておきました。

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 昨年久しぶりに刈谷での友だちに会い、彼女はバレエ教室に通っていたので、その後の先生のご活躍を知らせて驚いてもらうために図録を送りました。彼女はとても感激して喜んでくれました。そして図録が送り返されてきました。本と共にこんな手紙が添えられていました。
 《大切なご本をありがとうございました。お返しする前に、もう一度見直しました。遊牧民の素朴な生活の中に煌めく手仕事、圧倒されますね。文明が進むにつれ、便利な世の中になるにつれ、時間は生まれるはずなのに、手仕事は廃れていきます。そして工夫をすることや手を動かす、創りだすことが少なくなり、ものも考えない人間が増えるってわけ-----》
 一読して、“そうだ、そうだ”と思いました。戦後一生懸命生きた親に育てられ、そして今の文明の利器を使いこなせない私たちの世代が思っている今の世の中の歯がゆさでしょうか。
(津田 冨喜子)

posted by 東京民藝協会 at 17:22| Comment(0) | その他
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