2022年10月02日

2008年 パリでの柚木沙弥郎展(志賀直邦)

投稿がないので、いくらか古くなるが、前会長 志賀直邦氏がお書きになった標記の文章を紹介する。これは以前の『東京民藝たより』第66号(2009年1月発行)に載ったもので、日仏交流150年記念の行事としてパリで行われた民藝に関する2つの展示を紹介したものであった。掲出するのはその一部、柚木展の報告である。もう一つの展示は、「日本における民藝のエスプリ展」(ケ・ブランリ美術館)であった。(藤田)
          ***

 もうひとつ特筆したい企画展は、ヨーロッパ・ギャラリーで10月3日から開催されている「柚木沙弥郎・浮遊する領土」展である。場所はパリ中心部、サンジェルマン・デプレ教会の近くの画廊の多い地区にある。
 柚木氏は染色工芸家として知られるが、近年自由な境地を得て、型染だけでなく、リトグラフ、モノタイプ、リノ・カット、謄写版、カーボランダムなど多岐にわたる「版による表現」に取り組んできた。益田裕作によれば、これほど多くの版形式を自在につかいこなし、独自の作品を作り出した作家は、日本では柚木以外にはいないという。ただ、これらの多種な表現は、いかに意欲的な作家といえども、孤独なひとりだけの作業で作り出すことは不可能だ。アトリエMMGとの出会いがなければ生まれてこなかった、と益田は言う。
 本展では型による染布が主たる展示であるが、それらをテキスタイル・デザインとしてみるのではなく、コンテンポラリーな造形表現としてみようとする。
 私は柚木氏の原点に、芸術家であった祖父や父から受けた資質の外に、同時代的なもの、とくにエコール・ド・パリやロシア・アバンギャルドを想像するのだが、それはそれまでの様式美に対して、より民衆的で平易な表現を感じさせるからである。
 柳宗悦の「工藝の道」に教えを受け、染色の芹沢_介に師事し、時代の子として明快で自由な表現を旨とした柚木氏の仕事は、これからも私たちを楽しませ、生きることの意味を問いかけ続けることだろう。(後略)

posted by 東京民藝協会 at 19:02| Comment(0) | その他
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: