2014年05月12日

手元の郷土玩具(3)「中国・山東省の泥人形」

 今年の正月、福岡の太宰府天満宮へ初詣に出かけた際に、隣接する九州国立博物館の売店で見つけたもの。産地など詳しいことをその場で聞かなかったのだが、帰ってからインターネットで調べると、中国・山東省の「密(こうみつ)」というところで作られている泥人形(素焼きせずに、生泥をそのまま乾燥させ彩色したもの)らしい。思いがけぬ出会いに驚いたが、私が知らないだけで、中華街の土産物屋やアジア雑貨の店などでは案外当たり前のように売られているのかもしれない。

1405泥叫虎.JPG
泥叫虎

 虎は「泥叫虎」(「代响」とも)という玩具で、虎の胴体の前と後ろをなめし革または紙でつなぎ、胴を押すとアコーディオンのように空気が出て、虎の口の下の穴(葦の笛が嵌められている)からピッピッと音が鳴る。日本にも似たような「ぴいぴい」という玩具がある。

 もうひとつは「揺鼓」というもの。泥製の人形の中央が空洞になっていて、表側には丈夫な紙が張ってある。写真ではわかりにくいが、木の柄を廻すと、ばね仕掛になった小竹が白い土の歯車にはじかれて太鼓を叩き、パチパチという乾いた音を鳴らす。太鼓は何をデザインしたものかわからないが、他にも猿や人のかたちをしているものもある。黄・赤・緑などを配した僅かな彩色にも、日本の玩具とはひと味違う趣きがあって見飽きない。

1405揺鼓(正面).JPG
揺鼓(正面)

 素朴極まりないこれらの泥玩具は、戦前に旧満洲で日本人が蒐集した古い玩具の姿かたちをほぼそのまま留めている。戦前には旧満洲で専門に玩具を買いつける日本人がいて、その人から愛好家が買い求めた玩具コレクションが今も国内数ヶ所の博物館に収蔵され、図録も出版されている。戦後は日本人が容易に入ることのできない地域となったため、玩具たちのその後もわからないままだったが、近年また現地に出向いて玩具を探す人も出てきている。

1405揺鼓(上から見たところ).JPG
揺鼓(上から見たところ)

1405揺鼓(横から見たところ).JPG
揺鼓(横から見たところ)

 それにしても、終戦とその後の混乱、文化大革命、近代化といった時代の紆余曲折を経て、よくぞ今も作られているなぁとしみじみ思う。激動の時代を泳ぎ抜くだけの力が、この小さな泥人形たちに隠されているということか。
(千葉孝嗣)

posted by 東京民藝協会 at 18:59| Comment(4) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: