マーティ氏についてはネット上のウィキペディアに人物紹介がされていて、日本で氏の仕事をお手伝いなさっている佐藤さんによると、その内容に誤りはないとのことである。氏は今から50年前、1974年に来日、常滑で陶工の修行を行なった。1975年に「陶器を創る人たち」という記録映画を作り、さらにその数年後、文楽に取材して「文楽 冥途の飛脚」を作って、いずれも好評を博している。

会場で「陶器を創る人たち」を上映していただいた。これは小石原の太田熊雄、小鹿田の坂本茂木を取材撮影したもので、いまとなっては貴重な映像となっている。マーティ氏によると、あとになって坂本茂木の子息、工さんに聞くと、学校から帰ったらいきなりろくろの前に座らされて、それが最初のろくろ体験であった、という。
50年前にこのような記録映画を作った監督が他にいたかどうか、私の乏しい知識から言うと岩波映画製作所がただ一つ思い浮かのだが、どうなんだろう。

現在は、「民藝フィルムアーカイブ」を主宰して、しばしば来日、取材などを精力的に行っている。このいきさつは、ウキペディアによると〈1975年、『陶器を創る人たち』の制作後、バーナード・リーチの著作を読んで、リーチが戦前の日本の工芸を記録した映像を持っていることを知り、英国コーンウォール在の本人のもとを訪れた。直接対面した晩年のリーチは1934年から翌年にかけて撮影されたフィルムをグロスに預け、彼はこれを修復したが、このことがきっかけとなって民藝運動に関する古い映像・音声資料を収集及び修復しながら民藝運動に関するアーカイブを構築している〉。
東京民藝協会との関係で言えば、前々会長の志賀直邦氏の長いインタビュー映像があり、氏によると、この映像は海外の人々に民芸運動のことを知ってもらうためのよい案内になっている、という。
フィルムアーカイブのリストを拝見したが、リーチ、濱田、沖縄その他民藝関係の多彩な過去の映像があり、それらに現在のインタビューを補足してより正確な記録を目指していることに感心させられる。修復と編集作業の映像も見せていただいたが、素人が簡単に考えていたこととはまったく違って、大変な手間と時間がかかっていることを知った。こういう、大変な仕事を海外の方が独力でして下さっていることにあらためて感謝しなくてはないらない。 (藤田)