今年(平成26年)の初午は2月4日(火)である。初午は、和銅4(711)年に京都伏見稲荷大社のご祭神である宇迦御霊神(稲荷大神)が鎮座された日とされ、現在は新暦2月最初の午に日に、各地の稲荷神社でお祭りをしたり、油揚げや稲荷寿司を奉納する。
写真の「馬乗り狐」は土人形の元祖・伏見人形で、現在も盛業中の「丹嘉」(大西家)とは別に残っていた老舗の製造元「菱屋」(上田家)作のもの。20年ほど前に、伏見稲荷門前の伏見街道沿いにある古い商店で買い求めた。店番をしていたお婆さんによると、その店も戦前までは土人形を作っていたそうで、店の中には人形製造を賞する古い賞状が掲げてあった。戦前までは他にも伏見人形を製造販売する店が門前に数軒あったと、懐かしそうに話してくれた。
@伏見 菱屋 馬乗り狐
飾り馬の上に、お稲荷さんの神使である狐が御幣を持って乗るこの人形は、精緻で都会的な丹嘉のものに比べ、どこかとぼけた、田舎くさい作風である。店番のお婆さんが「お稲荷さんの霊験にあやかって、賭け事好きな人がよくこの人形を買っていく」と話してくれたのが懐かしい。「菱屋」の伏見人形は、今では製作されていない。
<追記>
上記の原稿を藤田さんにご覧いただいたたら、丹嘉製の「馬乗り狐」の写真はないか、との照会があった。手元には人形も写真もないので、ネットに出ていた丹嘉製の写真を藤田さんにお送りした。
なお、私の手元にあるような、御幣を持った狐が馬に乗った型は、丹嘉や他の産地でも見たことがない。伏見にはかつて土人形の製造元が沢山あって、型も膨大な数に上った。この人形は菱屋独自のものなのかもしれない。
「馬乗り狐」でもう一点、江戸から戦前期の今戸人形を克明に復元している吉田義和さんという方が作られた「馬乗り狐」の写真もお送りした。これは、年末にべにやさんからお送りいただいたもの。京都とはまた違った、東京の小粋な面白味がある。
(千葉孝嗣)

A同 丹嘉 馬乗り狐

B吉田義和さん 馬乗り狐