2017年05月31日

トライバルラグ展を見学

昨年、東京民藝協会の例会でトライバルラグの輸入販売を営む榊龍昭さんを講師に迎え、3回に渡ってお話をお聞きしました。
トライバルラグとは、遊牧民が織る絨毯のこと。例会ではその歴史から、用途、文様、織の構造までをわかりやすくお話して下さり、豊富な知識にとても驚かされました。
その榊さんの企画展が杉並区久我山で開催されるとのことで、会場となった神田川近くの民家にお邪魔してきました。

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今回はアフガニスタンのものが中心で、最近仕入れられたばかりのラグも数多く並んでいるとのこと。
印象に残ったものを画像とともにご紹介します。

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↑こちらは「ベシール」と呼ばれるトルクメンの絨毯。元々は衣装を入れていた大きな袋だったそうです。
非常に洗練された、モダンなデザインですが、100年以上前のものとのこと。

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そして一番インパクトがあったのは、今回の展示会の目玉の一つだと思われる、トルクメン・テケ族の「エンシ」と呼ばれる、彼らの住居であるテントの入口に掛ける絨毯でした。
エンシは遊牧民にとって非常に特別なもの。「窓枠」の柄が特徴的で、明らかに他の絨毯とは異なり、引き込まれるような、深い精神性を感じました。

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拡大した部分には、渡り鳥の象徴である「鶴」の頭(ではないかといわれている)の文様がみられます。シャーマニズムと深い関係がある「鶴」がモチーフに使われていることで、エンシには、大切な家族が生活する空間を守る結界ではないか、等々様々な見解があるそうです。

他にも祈祷時に使う絨毯、塩や穀物を入れる袋、ナンを包む布、らくだのこぶ飾り、婚礼用の袋など、生活の中から生まれた、伝統的な手仕事品を拝見することができ、例会に引き続き、とても勉強になりました。そして、榊さんのHP(http://tribe-log.com/)を読んでもわかりますが、とにかく知識を出し惜しみしない姿勢には本当に頭が下がります。ありがとうございました。
(奥村)

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2016年01月22日

四国村にいってきました。

2011年12月に東京民藝協会のお話会にて講師を務めていただいた、しめかざり研究家・森須磨子さんのコレクション展が、香川県の四国村で現在開催されています。広大な敷地を持つ四国村には、四国各地から移築された風情あるさまざまな建造物が点在しています。
蔦を使ったつり橋を渡り、たくさんの民家を通り過ぎた先に、展示会場である「四国村ギャラリー」がありました。安藤忠雄氏の設計だそうです。

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会場内には、森さん所蔵の北海道から沖縄までのしめ飾りのうち、厳選された約100点がずらりと展示されていました。 北海道や東北では藁ではなくスゲが使われていたり、九州には鶴が多かったり、ちょっとした結び目も工夫されていて面白かったりと、興味深く拝見しました。楽しく鑑賞しながらも、これだけ集めるのにどれだけの手間と時間を要したのだろうとの思いに至り、協会のお話会で伺った森さんの苦労話の記憶が甦ってきました。

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その日は来館者にぜんざいが振る舞われていて、あたたかくほっと一息ついた後、入口付近のうどん屋さんで本場の讃岐うどんを堪能してきました。 森さんの展示会は、2月14日まで開催されています。四国村の近くには、栗林公園やイサムノグチ庭園美術館もあります。うどん県、おすすめです。
(奥村)


「寿ぎ百様〜森須磨子しめ飾りコレクション展〜」
2015年12月12日(土)〜 2016年2月14日(日)
四国村内 四国村ギャラリー(香川県高松市屋島中町91)
http://www.shikokumura.or.jp/
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2015年04月18日

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館の企画展

東京・三鷹にある国際基督教大学の湯浅八郎記念館で、企画展「子どもと遊び」が開かれています(7月3日まで、無料、日・月・祝休館)。
ここの記念館は民芸の収集家としても知られる湯浅先生のお人柄を感じさせる実直で気持ちのいい場所です。
約6千点の所蔵品の中から、2階のフロアで「子どもと遊び」にかかわる233点が特別展示されています。
江戸後期から昭和までの子どもたちの宝物を見せてもらえる趣向です。
中でも目を引くのは小さな小さな豆人形たち。親指の爪くらいの大きさの三春駒もいます。「子どもを驚かせよう」と限界に挑んで作ったのでしょうか。
ダルマや、姉さま人形、羽子板、凧、ままごと道具……玩具だけでなく、
子どもたちが着ていた着物も展示されています。ミッキーマウスを織り込んだ木綿の絣もありました。これも、さぞや子どもは喜んだことでしょう。
1階の資料室では、壁面いっぱいの蕎麦猪口を見ることができます。
 
最近、人気のある宮家の次女さまが入学されたこともあり、あきらかに部外者の来訪が増えているようです。
そのお陰か、ふだんは静かな記念館もお客様が増えているようでした。
ソメイヨシノが数百b続く通称「滑走路」はもはや新緑の季節ですが、豊かな武蔵野の森に入ると心が洗われます。
お時間があれば、ぜひ足をお運びください。
(鶴見知子)

 

「子どもと遊び 」
2015年4月7日(火)〜7月3日(金)
国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館
三鷹市大沢3-10-2
午前10時〜午後5時(土曜日は午後4時30分まで)
http://subsite.icu.ac.jp/yuasa_museum/

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2014年04月25日

第5回「古民藝品の展示会」(3月29日)に参加して

 昨年8月に続いて、尾久彰三氏所蔵の品をみせていただき、お話を伺うことができました。テーマは「写真と物による尊者展」<写真・大屋孝雄 物・尾久彰三>で、会場は相模原市にある「小原の郷」です。
 神様に捧げる、神様が降りてくる依代として尊きもの、その思いを形にしたり、思いを寄せる尊者達。展示室に入ると掛軸が飾られ黒い仏像が並んでいます。厨子もありました。掛軸は梵字で書かれたもの、乱れ版(乱れたものの中に美しさが承認される日本の素晴らしさ)、大津絵では唯一であろう役行者のもの、仏具を絵にしているもの、拓本のものなどどれも味わい深いものでした。
 囲炉裏で燻されて真黒になった仏様は、弘法大師、一刀彫の鷹、恵比須、阿弥陀仏、子安観音の姿を借りたマリア様など初めてみるものもあり、興味深い数々でしたが中でも私が惹かれたものは、「犬」と「山の神」の彫り物でした。秋田のマタギの家の神棚にあった「犬」はマタギにとって生命を託し、感謝の表れであり、「山の神」は、春先になると田に降りて来て、農閑期は山に帰るので、どちらもマタギにとっては大切なものなのですね。江戸末期まで家々に祀られて人々の様々な願いを聞いてきた仏像達に思わず心の中で手を合わせていました。

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 次の和室に入ると多数の真白い御飾りと写真。南三陸の紙子です。写真を撮られた大屋孝雄氏が加わり、御飾りについて教えていただきました。三陸では網飾りといわれ、神主さんがつくって氏子に配り一年間神棚に飾るので一年の寿命のものであるということ、網飾りは東北地方の一地域だけ残っており、現物は燃やされるので残らない、神主の高齢化により残しておきたいと願っていること、造形の仕事として高名な仏様や建築物などが持っている美と変らない美しさがあるということ、日本において江戸時代に庶民の文化があったのは(浮世絵なども含めて)世界でも誇るべきものであり、又、神秘的なものに対する庶民の心を残していきたいなど、お二人の思いが語られました。当時、御飾りをつくる時期になると紙屋さんが和紙を売りに来たり、氏子宅で御飾りをつくっている時に刃物が切れなくなると困るので研師も一緒に家々を回るというお話、工芸と関連しているということも興味深くお聞きしました。
 今回の展示全体を通して「人間の力の弱さ、人間は小さい存在というものを感じる。信仰はその人間を支えてくれるもの」「いいなと思うものは大切にして。大事にしてくれたものはよい」「各々の家庭の中で心がけていれば、ひとつやふたつのものでも美術館に劣らない空間ができる」というお話も心に残りました。
 今まで何気にみていた御飾りの奥深さに気付かされ、早速大屋氏写真の「東北の伝承切り紙」※の本を購入し、勉強中です。

※「東北の伝承切り紙」千葉惣次=文 大屋孝雄=写真
 平凡社 コロナブックス


《御飾りについてのお知らせ》
○「伝承切り紙の世界」
平成26年3月8日〜6月8日
千葉県立房総のむら


○「東北のオカザリ展−神宿りの紙飾りー」
平成26年7月12日〜9月15日
多摩美術大学美術館

(石川 廣美)

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2011年12月18日

「DOMA 秋岡芳夫展 モノへの思想と関係のデザイン」

恥ずかしながら、秋岡芳夫さんの名前を私は全く知らなかった。秋岡さんとともに活動していた、「モノモノ」代表の山口泰子さんの話を聞く機会があるので、予習として(でもほとんど調べずに)目黒区美術館に足を運んだ。

展覧会の感想を一言で表すと、「驚いた」だった。まず、1階入口の大量の竹トンボに出迎えられて驚いた。多才かつデザイン活動に確かな思想を持って“手の復権”を自ら乗り出し取り組んでいった経緯を豊富な資料で追っていて、それに驚き、感心した。広く取ったフリースペースには数種類の食器がおかれ、スライドで用途に捉われない発想による使い方を見せてくれ、それに唸った。また、道具のコレクションも資料として一級だ。
消費されるモノのデザインは資料として残りにくい。それでも、各年代の活動に関する豊富な資料が、世の中の動きを追いながらいくつものデザイナーの顔を伝えてくれた。
プロダクトデザインが好きな人、手しごとが好きな人、はたまた絵本や装丁が好きな人…秋岡さんはそれぞれに一級の仕事をしているから、それらの観点だけでも楽しめるだろう。
でも、それではもったいない。消費社会へとまっしぐらというあの60年代に、それまでの企業のためのデザインから脱却した、その先見性を持ちえたデザイナーや生産者がいただろうか。その、「モノモノ」というグループでの活動について、鑑賞後に山口さんから聞いたお話は、たいへん勉強になった。
私が秋岡さんの活動の中で最も関心を持ったのは、作り手と使い手(“消費者”ではなく)を結ぶ個人や地球環境をも含めた生活の仕方を唱える“思想”だった。わかりやすい絵を描ける筆者が高度経済成長期の日本と日本人に提案するその思想に立脚してまとめ上げた内容は、今見ても斬新であり、21世紀の私たちに強く問いかけているとしか思えない。
山口氏が言っていた。通産省(今の経済産業省)が地場産業をテコ入れするために東京からデザイナーを派遣した。県がデザイナーの言われるままに問屋制度を飛ばして作っても、売れない。それを誰の役にも立たないお金(助成金)の使い方だと、秋岡氏は見抜いていたそうだ。だから、指導でなくアドバイス程度にとどめ、試作品を買い取って、展示会の方式を用いて使い手を開発してしまおうという発想で、モノモノは活動し、好評を博した。

民藝に関心を持つ人は、このモノモノでの活動と、それ以降の東北や北海道における、地域社会のデザインに取り組んだ経緯を、ぜひじっくりと見ていただきたい。秋岡氏は、ネーミングのセンスにもすぐれていた。「里山」、「裏作工芸」、「第3次林業」…他にも色々あるし、展示内容からそれが随所に伺える。
考えたことを伝える画力と言葉のセンスを持ち合わせ、著作も何冊も出していたのだが、没後10年以上もたつと新刊書店では入手できない(出版業界にいた者としては、こういう実情に何とも言えない思いを持つ)。幸い、復刊ドットコムで2点を入手でき、美術館では玉川大学出版会がオンデマンドで復刊重版した何点かを扱っていた。ちなみに、今回の展示のカタログは展覧会終了後に、新刊書店で購入できるように流通のためのコードをつけて発売される予定があるそうだ。遠方で足を運べない方は、この書籍化を待っていてほしい。
今回の展覧会は、巡回展ではなく目黒区美術館単館での企画となった。秋岡さんと東北工業大学の人達とともに、村づくりに取り組んだ北海道や岩手県では残念ながら開催されない。色々な事情があってできなかったと、山口さんからお聞きした。
貴重な展覧会であると知り、その後再訪してじっくりと見てきた。改めて、素晴らしかった。
(会員:加藤亜希子)


DOMA秋岡芳夫展 −モノへの思想と関係のデザイン
2011年12月25日(日)まで 
10:00〜18:00(入館は17:30まで) 休館日:月曜日
目黒区美術館
http://www.mmat.jp/


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2011年11月27日

大島美智子さんの個展

10月の末、神田小川町の「世界観ギャラリー」で会員の大島美智子さんの個展「手のひらのスケッチ」がありました。
私は行けなかったのですが、そのときの写真を送っていただきました。拝見すると、岡田さんご夫妻、中澤さんが写っています。額が大島さんの絵、染が娘さんの作品とのこと。(紙焼きを撮影したものなので不鮮明ですみません)
電話でお話したら、会場で「益子参考館復興支援箱」を置いて絵葉書を買ってもらい、そのお金を参考館に届けてきた。参考館の被災の様子を実際に見て衝撃を受けた、早く復興するといいとつくづく思った、とのことです。
-----自分で書いてくれといったら、適当に書いてくれとのことで、行き届かない代筆です。
(藤田)


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