安孫子駅改札で、文学館の竹下さんが出迎えて下さり、ずーとガイドしていただきました。駅前からのバスで5、6分、手賀沼へそぞろ歩き、ゆかりの文人、志賀直哉、柳宗悦、武者小路実篤らの文学活動の場を経てバーナードリーチの碑まで。
それから、安孫子市立白樺文学館へ。ここは佐野力という実業家が私財を投じて建設したもので、コレクションとともに平成21年市に寄贈されたのだそうです。白樺派作家の原稿、書画、また民藝関係の資料、運動にかかわった人々の作品を展示しています。ロダンの彫刻からリーチの弟子ルゥシィ・リーの作品まで、コンパクトにわかりやすく展示されています。地階では、柳兼子さんのCDをゆっくり拝聴できました。
その後、向かいにある志賀直哉邸跡へ。いまは公園になっており、約900坪あるそうです。竹下さんのお話では、公園から見上げる高台600坪も、少し離れた武者小路が住んだ場所も当時は志賀家の所有だったそうです。少し道を戻りいくらかきつい素敵な段々を上ると「三樹荘」跡、柳夫妻が住んだ天神山があります。浅川伯教が例の朝鮮白磁を持参したところであり、柳はここに住んだ7年間に朝鮮に3回出かけています。今は俳人の住居になっていて公開されていませんが、外から由来の3大木を確認、リーチの窯跡はあの辺にかと思いを巡らせて。向かいは柳の叔父、加納治五郎の別荘だったところ、手賀沼を見下ろす庭で記念写真を撮りました。

昼食は、駅前のカフェレストラン「ランコルトン」で柳兼子さんのカレーを再現した「白樺派のカレー」を賞味しました。兼子は、リーチの勧めで隠し味の味噌入りカレーを宗悦や客にふるまっていたのです。予約必要のたいそうなカレーの理由を女主人に聞いてみたところ、注文を受けてからルーを作るのに1週間かかる、小麦粉を使わず野菜だけで1週間とろとろと火を入れて熟成させ、契約農家の味噌で仕上げるそうです。思い起こせば、私の母もルーからカレーを作っていました。コーヒーをプラスして千円でおつりがきます。それからレトルトの「白樺派のカレー」は文学館ほかで売られているようです。
安孫子は、1昨年の地震で被害があって、尋ねるたびに整備されかわっていますが、当時の面影の残る町であり続けてほしいものです。
(内山昭子)