「炎はつなぐ」という映画が公開された。監督は大西暢夫。「炎」とは和ろうそくの炎のことで、この映画は、和ろうそくが作られる手順、手仕事のかずかずを追ったものである。
ろうそくの原料はハゼの木の実である(漆の実も使われた)。これを高い木に登って採集、集まった実を蒸して圧搾、油をとる。実の殻が残るがそれは藍染の土間を温めるために使われる。低い温度で長持ちするので具合がいいのだそうだ。さらにその灰が焼き物の釉の原料となる。映画に映っているハゼの灰は、小鹿田に行くのだそうだ(映像はない)。
ろうそくの芯は竹の串に和紙を巻き、その上から燈心草の髄をらせん状に巻いて、さらに真綿で全体を包む。その芯をハゼの油を溶かした液に浸すことを繰り返しだんだんと太くしていく。最後に上下を切って形を整える。和ろうそくの炎は揺らぐことが特徴とされているが、これは、芯が中空でそこを空気が上昇するからだという。----前後するが、和紙を巻く芯の竹串は後で抜くので、そこが中空になる。
出典:「炎はつなぐ」特別サイト(https://honoowatsunagu.com)
この映画は、実の採集に始まって、油の採取、和紙、燈心草、真綿による芯づくり、成型まで、それぞれの過程を丹念に追ったものである。和ろうそくの制作と言えば、普通は。溶けた蝋の中に棒を突っ込んで、だんだんと太くしていく最終の成型の場面しか思い浮かばない。が、実は一本のろうそくができるまでには、多くの職種が関与し、かなりの労働が注がれている。それぞれの職種には膨大な技術の蓄積があり、その技術の継承には長年の修行が必要だ。何でもないような実の採集にしても、まずは採取に最適な時期を選ぶ目が必要だろうし、作業は高い木に上る危険なものである。この後の諸工程に至ってはそれ以上の熟練と労働集約が求められる。どれか一つが欠けても、和ろうそくはできない。しかも、上記の各職種には、さらにそれを支える固有の道具や資材があるわけで、それを作る人たちが存在するということになる。そう考えると、世にある様々なものを成り立たせている仕組みは想像をこえている。
そんなことを教えてくれる映画であった。注文を付けるなら、前後に登場する監督の車とオートバイに乗る部分は不要だった。また、例えば藍のすくもつくり、墨の油煙つくり、金箔つくりのような-----それはそれとして興味をひくものではあるが、直接関係のないところにかなり時間をつかっており、それが余計だとも思った。どこまでも、和ろうそくの製造の源をたどることが、題名「炎はつなぐ」にふさわしかったのではないか。
(藤田)
