昭和29年(1954年)に設立された東京民藝協会には、現在100人ほどの会員が所属しています。
このたび、数人の会員の方に「東京民藝協会に入会したきっかけ」を書いていただきました。入会をお考えの方のご参考になれば幸いです。
まずは、竹村知洋さんです。*
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私が東京民藝協会に入会したのは20歳頃(現在46歳)だったと記憶しています。その理由は、東京民藝協会の学生会員の年会費が「友の会」よりも安かったからです。当時は民藝運動に積極的に関わりたいというような高い志で入会したわけではありませんでした。
最初に日本民藝館へ足を運んだ理由は、父の書棚にあった『民藝四十年』を読んだからです。初めてみた西館の長屋門の美しさに感激し、何度か続けて足を運んでいるうちに東京民藝協会のことを知り、現在に至っています。
益子焼徳利と河和田塗猪口 私と民藝品との出会いは生まれながらのものといえます。私の父は浅草のかっぱ橋道具街にある漆器屋に勤めておりました。また私の伯父は現代の名工として黄授褒章を受賞した伝統工芸士で、福井県鯖江市を産地とする越前漆器(河和田塗)の木地師です。小学生のころは夏休みになると伯父の家へ行っていましたので、伯父が朝早くから轆轤で木を削る音や周囲に漂う木の香りのことをよく覚えています。そのため私は幼いころから漆器に囲 まれた生活をしてきましたが、その美しさに気づいたのは大学時代に柳宗悦の著作を読んでからです。それからたびたび民藝館や工芸品店に足を運ぶようになり、気に入った工芸品を生活の中に取り入れていきました。
私の仕事は中学・高校の社会科教員なので、授業のなかで民藝品の素晴らしさを伝えています。公民科の「倫理」の授業では、日本の現代思想の分野で柳宗悦を取り扱いますので、 実際に民藝品を見せ、直接触らせながら柳宗悦の民藝理論を教えています。
その中で気づいたことは、10代の人でも民藝品に興味を抱いてくれる生徒が意外にも多いということです。子供は「物の美」について知らないだけです。大人も含めて日本人は全体的に自分の国の素晴らしさを知らない人が多いような気がしています。これは大変もったいないことだと感じています。
民藝の美を普及しようという民藝運動の意義はここにあると考えています。工芸分野の高齢化や後継者不足の問題は大変深刻ですが、若い人たちに民藝の美を知ってもらい、生活の中に少しでも民藝品を取り入れてもらえることで日本の伝統文化は受け継がれていくはずです。
壺屋焼抱瓶と猪口 最初に東京民藝協会に入会したきっかけは単に費用の問題でしたが、今でも継続して入会している東京民藝協会の一員としてこれからも活動を続けていきたいと考えています。
(竹村知洋)
posted by 東京民藝協会 at 19:19|
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シリーズ 協会に入会したきっかけ