2025年07月27日

瀬戸夏期学校 6月21日〜22日

 第163回民藝夏期学校瀬戸会場が6月に行われた。主催は日本民藝協会と瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム(瀬戸民藝館)、これに私ども東京民芸協会が共催という形でお手伝いをした。瀬戸は民藝館ができたばかりという状態で、もちろん夏期学校などの経験がないので、東京協会が多少でもお手伝いして、愛知もしくは名古屋の民藝協会の再発足等に役立てばいいのではということであった。

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 一年ほどまえ準備のために、野崎会長と本部の村上さん他役員数名で瀬戸に行った。現地側の瀬戸本業窯の水野雄介八代後継、飛騨協会の朝倉圭一さん他と会場等の候補を見て回り、同時に大まかなスケジュールを検討した。最寄りの駅尾張瀬戸駅のすぐ近くに「瀬戸蔵」という瀬戸市の施設があるのでそこを会場とすること、懇親会をやはり近くの「レンタルスペース梅村商店」で行うことを決めた。さらに、ホテル ルートイン瀬戸の部屋を数十室(正しい数字は忘れた)抑えることができた。また、1日目に講演とシンポジウムをできれば公開で行うこと、2日目に瀬戸民藝館等の見学を行うことも決めた。瀬戸蔵は市の施設なので抽選頼みであるが、後日幸いに希望の日を抑えることができた。あとは水野さんとそのご家族、地元の方々のほぼ半年にわたる奔走で実施の運びとなったのである。どのようなことであれ何か行事を実施するためには目に見えにくい仕事と時間が費やされる。この間とくに水野さんは本業に差し障りがあるほどの忙しさだったと想像される。

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 募集を始めると定員60人を上回る応募があり申し込みが遅れた人たちは抽選になった。また公開講座には100人の参加者があり、かくして経費などは予算内に収まったとのことである。なお、東京協会の参加者は20人であった。
 21日の午後、公開講座の講演、瀬戸蔵ミュージアム館長 服部文孝氏の講演「瀬戸の窯業の成立と発展」、濱田琢司氏の進行による4人、朝倉さん、野崎会長、水野さん、南慎太郎さんのパネルディスカッション「民藝が結ぶ地域社会―瀬戸からの発信」が行われた。
 夕方からの懇親会の会場「レンタルスペース梅村商店」は、茶陶の問屋だった建物を催事や宴会に使えるように改装した気持ちのよい施設であった。ここといい、先の南氏が経営する「ますきち」という宿泊施設といい、古い建物を改装して新しい魅力を作り出し、稼げる施設にしているようである。

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 2日目は、瀬戸民藝館と本業窯の見学、あわせて現当主7代目水野半次郎氏の解説付きで最後に登り窯を焚いたときの記録映像の上映があった。水野氏の瀬戸のお話はたいへん面白く興味が尽きなかった。並行して瀬戸蔵ミュージアムの見学、「窯垣の小途」や町内の散策を経て、最後は昼食をやはり瀬戸蔵内のレストランでとって閉校式を行った。
 1泊2日で短い感もあったが、少ない人員で、初めての場所で夏期学校が滞りなく実施できたことはよかったと思う。水野さんをはじめ、瀬戸の若い方々のやる気と能力に感心させられた。
 水野家の皆さま、瀬戸の皆さま、ありがとうございました。
(藤田)

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2025年05月25日

2025年6月例会「根子町人形のお話」

6月6日(金)に駒場住区センターにて、下記の例会を開催いたします。
是非ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、当日はズームによるオンライン中継も行います。

2025年6月例会
「根子町人形のお話」
日時:6月6日(金)19:00〜
場所:駒場住区センター
(目黒区駒場 1-22-4  03-3469-2613 駒場東大前駅より徒歩8分)
講師:幸田冬子さん(会員、根子町人形製作者)
参加費:500円
定員:22人(要予約、会員優先/先着順)
参加申し込み:4日(水)までに協会アドレス(tokyomingeikyokai1954@gmail.com)に申し込みください。

福島市清水町で江戸後期から大正頃まで作られていた土人形「根子町人形(ねっこまちにんぎょう)」の再現製作をされている幸田さんに、根子町人形について近県で製作されていた土人形と共にお話いただきます。当日、根子町人形の他、近県の土人形もお持ちいただくそうです。是非ご参加ください。
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2025年05月22日

「株式会社まちづくり山上」を訪ねて──暮らしに根付く中津箒

 かつて柳宗悦氏が紹介したように、日本には大正から昭和にかけて、人々の暮らしに根ざした多くの手仕事がありました。しかし時代の流れとともに姿を消してしまったものも少なくありません。そうした手仕事の再興に取り組む人々の営みに迫るべく、私たちは5月10日、神奈川県愛甲郡愛川町中津(旧中津村)にある工房「株式会社まちづくり山上」を訪ねました。ここでは柳川直子さんが中心となり中津箒を製作しています。

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 中津箒の歴史は、幕末に柳川商店の初代・柳川常右衛門が箒作りを始めたことに遡ります。やがて中津村周辺では、箒づくりが一大産業となりましたが、昭和に入り東京オリンピック以降は、日本人の生活がますます西洋化するに伴い、箒の需要は減少し衰退に向かいます。
 「このままでは箒が絶えてしまう」そうした危機感を胸に、家業を再興しようと決意したのが、柳川商店6代目にあたる直子さんでした。彼女は2003年、48歳にして柳川商店の屋号「山上」を冠した「株式会社まちづくり山上」を設立。中津に伝わる技術を活かして作る箒に「中津箒」という名前を与え、素材であるホウキモロコシの栽培から職人育成、体験ワークショップなど、幅広い活動を展開し始めます。
 最初に取り組んだのは、箒づくりに欠かせないホウキモロコシの種の確保でした。直子さんは各地を訪ね歩き、ようやく近隣の高齢者が自家採種していた種を譲り受けることができました。除草剤を使わず手で草を抜き、夏の日差しの下で土と向き合う日々。「草を育てるのがいちばん大変なんです」と直子さんは語ります。虫、天気、草の勢いなど自然の力に翻弄されながらも、なるべく手をかけすぎず、草の生命力と共存する栽培方法を探っています。
 そして直子さんは同時期に、中津箒の復興の準備のために学芸員の資格を取ろうと一念発起し、武蔵野美術大学の大学院に入学します。そこで、後に中津箒の製作面のみならず、その魅力と価値を社会に広める活動に大きな貢献を果たす吉田慎司氏と出会いました。もともと彼は優れたアーチストであり、直子さんは彼の多岐にわたるサポートにより素材や技術への理解も深めることができました。現在も彼は北海道を拠点としながら、毎年夏になると工房を訪れて製作に加わってくれています。

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京都の職人が作った箒

 中津箒の製作には、素材づくりから染色、道具の手入れに至るまで多くの工程があります。多くの道具は工房で自作されたもので、染色にも工夫が凝らされています。「父の代までの箒は、言われた通りに作るだけの“道具”でした。でも私は、“美しい箒”を作りたいんです」と直子さん。美しい箒づくりは、京都の職人が作った見事な箒を目にし、衝撃を受けたことが契機でした。直子さんは、その技を学ぶため実際にその職人の元を訪ねたといいます。「作り方は人の中にしか残っていない。記録には残っていないんです」と語り、人から人へと伝わる「手の技」こそが、ものづくりの本質だと確信しています。
 現在の中津箒は、日本人の暮らしに合わせて進化を遂げています。かつての長い箒に代わり、今はテーブルや椅子のある住空間に馴染む短めの箒が主流に。持ち手の角度なども工夫され、手首に負担がかからない設計です。つまり、使う人の癖を覚えて形が整い、しなやかさを増していくのです。「箒は、使うことで美しくなります」。直子さんの言葉の裏には、単なる造形を超えて、使い手とともに育つ道具への深い信頼があります。

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 そして工房では、現在7人の職人さんが働いていますが、子育て中の人も働きやすいよう柔軟な体制が整えられ、彼らは製作だけでなく販売や畑仕事も含めた全体の仕事に関わります。「昔、この工房ではベテラン職人が偉そうに後輩を指導するような場所だったけれど、私はそんな場にはしたくないんです」と直子さん。かつての封建的な徒弟制度から脱却し、誰もが気持ちよく働ける職場づくりを重視しています。
 中津箒は、単なる掃除道具ではありません。それは、丁寧な暮らしを体現する道具であり、人と人、そして自然との向き合い方を映し出す存在といえます。工房では、今も若い世代とともに新たな箒の可能性を模索しながら、静かに、しかし確かにその営みが続けられています。
(江澤伸子)


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2025年05月13日

東京民藝協会5月例会

東京民藝協会主催5月例会のお知らせです。
ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

東京民藝協会5月オンライン例会
「大阪の民藝運動」
日時:5月30日(金)19:00〜
講師:小野絢子氏(大阪日本民芸館学芸員)
現在、大阪日本民芸館では、特別展「大阪の民藝運動―三宅忠一の眼―」が開催されています(7月15日まで)。
これにちなんで、現在万博が開催されている大阪から、学芸員の小野さんに「大阪の民藝運動」をテーマにオンラインでお話しいただきます。ぜひご参加ください。
*大阪日本民芸館は、1970年の日本万国博覧会で、日本民藝館が出展した「日本民芸館」を引き継ぐかたちで開館しました。
posted by 東京民藝協会 at 18:33| Comment(0) | 例会